幻影の星 白石一文
ワインメーカーの東京本社に勤める熊沢武夫は6月の朝、地元長崎県諫早に住む母からの電話で起こされる。 母の電話は武夫のバーバリーのレインコートが近所のバス停に置き忘れられていたという内容だった。レインコートには武夫の名前が刺繍されているという。 そのコートは確かに武夫のものに違いないが、この部屋のクローゼットに掛かっているので、諫早にあるはずがない。 後日母から送られてきたコートは多少使い古されているという以外は、手元のコートとまったく同一のものであり、そのポケットには「一か月以上先に発売される予定の」m&mの新作チョコレートとデジカメのSDカードが入っていた。壊れていたSDカードを修理に出し、修復されたSDカードを確認すると撮影した記憶のない写真が数枚含まれていた。 一方、諫早で昼はOL、夜はお店に勤める滝井るり子は、常連のお客さんから携帯を届けられる。河原に落ちていたという携帯はたしかに自分のものだが、その携帯は手元にある。 東日本大震災後を舞台にふたりの身に起こる不思議な出来事を通し、またふたりの思考を通して、現代の日本における「時間」や「死」という抽象的な事柄が考察されます。 1章から始まり0章で完結する構成に、誰しもが生まれてから死ぬまで淡々と毎日を一方向に生きると考えるとつまらないし、経験や思い出という過去、夢や希望という未来をいつも意識して生きるともっと人生を楽しめるんじゃないかと感じました。 恋愛 ★★★★ スリル ★★★ 感動 ★★★★★ 総合 ★★★★ |
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