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kumago

  • Author:kumago
  • 関西在住会社員。読書はもっぱら電車の中。熱中のあまり乗り過ごすこともしばしば。でもそんな小説に出会えたときは最高!
    *各記事のアイコンはAmazonのサイトにリンクしていています。
    Amazonの記事にも作品のあらすじや読んだ方の感想がありますので、ぜひそちらも参考に。
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スプートニクの恋人 村上春樹


「パン屋再襲撃」に続いて、村上春樹の古い作品です。

この物語の主要な登場人物は、僕、僕の大学の同級生だった22歳のすみれ、そしてすみれが激しい恋に落ちた17歳年上のミュウの3人。

すみれは大学を中退し、小説家をめざして毎日文章を書き続ける「救いがたいロマンチストであり、頑迷でシニカルで、よく表現して世間知らず」な女の子だった。
そしてすみれが生まれて初めて恋した相手は、韓国人の父親の跡を継いでいくつかの事業をおこなっている魅力的な女性であった。
僕とすみれは互いになんでも話す唯一の友人でもあり、僕はすみれに恋していた。
すみれはいとこの結婚式の披露宴でミュウに出会い、ミュウの会社で働きだすことになる。僕は、それを機に次第に変化していくすみれから、ミュウへの気持ちを聞かされるたびにせつない悲しい気持ちになる。

僕がすみれの引っ越しを手伝った翌週、ミュウとすみれが仕事でヨーロッパにいることをイタリアからのすみれの長い手紙で知ることになる。そして。。。

「スプートニク」というのはソビエト(ロシア)が打ち上げた世界初の人工衛星の名前で、すみれはミュウとの会話から思いつき、心の中でミュウのことを「スプートニクの恋人」と呼んでいました。

この作品はずっと以前に読んだきりで、今回ひさしぶりに読みました。以前に読んだ時にはあまり感じなかったとてもせつない気持ちになり、やはり村上春樹の作品は好きだなと思いました。

物語の後半はここでは書きませんが、ある部分がとても今の自分の(悲しくて切ない)気持ちに響きました。

「人にはそれぞれ、あるとくべつな年代にしか手にすることのできないとくべつなものごとがある。それはささやかな炎のようなものだ。注意深く幸運な人はそれを大事に保ち、大きく育てて、たいまつとしてかざして生きていくことができる。
でもひとたび失われてしまえば、その炎はもう永遠に取り戻せない。」

その通りですね。

恋愛  ★★★
スリル  ★★★★
感動  ★★★★
総合  ★★★★★

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彗星物語 宮本輝


1985年(昭和60年)、兵庫県伊丹市のいまだ古い農家も残る町並みに大家族が暮らす一軒家があった。
この物語の語り部である城田敦子と舅の福造、夫の晋太郎、長男で24歳の幸一、21歳の真由美、ことし高校を卒業して働きだす紀代美と小学5年生の恭太の一家と、晋太郎の妹で夫の浮気が発覚し離婚し傷ついて実家に出戻っためぐみと4人の子供達そして老ビーグル犬のフックの総勢12人と1匹であった。

そこへハンガリーから神戸大学で学ぶ為に3年間城田家で暮らすことになったボラージュが加わった。

事業に失敗し、いつかは再起を期しながら家族への負い目を感じながら勤めに出る晋太郎をはじめ、それぞれに人生に悩み日々の暮らしを共有する家族に、まったく育ってきた環境も価値観も異なるボラージュが加わることにより、それぞれが時にはげしく互いにぶつかりながらも家族を思いやり人として育っていく様子が描かれる。

平成7年発表の作品ですが、近年の作品につながる宮本輝さんらしい家族の深い愛情が描かれた作品だと思います。

大家族のものがたりですが、人数の多少ではなくたとえふたりの家族でも日々様々な感情のやり取りが生まれ、そこにしかない物語が生まれています。常に日本中で世界中で。
そんな当たり前のことにふと気づかされ感動させられる作品ですね。
ラストシーン、私は電車の中で泣いてしまいました。

恋愛  ★★★★
スリル ★★★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★

THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

輝く夜 百田尚樹

「永遠の0」の百田尚樹のクリスマスを主題にした5話の短編集です。

『魔法の万年筆』
34歳の恵子はクリスマスイブの今日、7年間勤めてきた小さい会社の社長から突然の解雇を通告された。
会社の経営が思わしくないことを知っていた恵子は社長や他の年下の女子社員を気遣い、解雇を受け入れる。
今日は恵子の弟の経営する小さな会社が倒産しそうなことを昨日知ったため、ほぼ全財産の200万円を今日振り込んだところだった。
かつて愛し合った男が後輩の女に寝取られてしまったことなどを思い出し、寂れた商店街を歩いていた恵子は、みすぼらしい路上で座り込んでいた物乞いに同情し、ハンバーガーショップでハンバーガーを買い与える。
するとその物乞いが後からやってきて、自分はサンタクロースなので魔法の万年筆をプレゼントするという。その万年筆で書いた願い事が3つ叶うということだった。

『猫』
イベント・プロデュース会社で派遣社員として働く雅子は、クリスマスイブの夜、ハンサムで仕事ができ男性としてとても魅力的な青年実業家社長の石丸とふたり、急ぎの仕事のため残業していた。
仕事の後、信じられないことに石丸から食事に誘われた雅子は、一人住まいのマンションで待つ猫のみーちゃんのことを話す。
すると、石丸は食事後タクシーで送ってくれ水を一杯飲ませて欲しいと言う。強引な石丸に戸惑う雅子だったが。

『ケーキ』
病院病棟でクリスマスイブを迎えている杉野真理子は20歳の若さでありながら、全身に転移した末期癌で今晩にも息を引き取ろうとしていた。
親に捨てられ施設で育った真理子は中学を卒業し美容師になる。努力して確かな技術を身につけた真理子だったが、夢半ばで病に倒れる。
死を悟った真理子は、初めて恋心を抱いた担当医の大原先生や優しくしてくれる美容室の藤崎店長のことを思いながら夢の中でサンタクロースに、「日本一の美容師になれなくてもいいから、もう少し生かして欲しい」とお願いする。するとその瞬間、眼が開き驚異的に完治してしまう。
なぜか右手の親指だけが曲がらなくなったが、退院した真理子はケーキ屋さんになり、夫や子どもにも恵まれる。

『タクシー』
来年で30歳になる依子はクリスマスの夜、友人と飲んだ後乗り込んだタクシーで運転手に酔った勢いで話し始める。
4年前同じ工場で働く和美と沖縄に旅行に行き、スチュワーデスと偽って二人組みのテレビ局のディレクターの男性たちと仲良くなる。
東京に戻ってからもその一人の島尾に誘われた依子は、島尾のことを好きになってしまうが嘘をついていたことを言い出せずにいた。
クリスマスイブに会う約束をしたが、その1週間前に思い切って嘘を詫びる手紙を送り、許せないならイブにはこないで欲しいと告げる。
その結果、島尾から急な用事が入ったのでイブにはいけないと電話で言われた依子は、携帯電話の番号を変えてしまい失恋したのだった。

『サンタクロース』
イブの夜、和子は夫の賢治2人の息子と一人の娘に囲まれて幸せな時間を過ごしていた。賢治と2人になった時、和子は18年前のイブの夜に起こった不思議な出来事を賢治に話し出す。
それは、子どもの頃に母親を亡くし、大切に育ててくれた父も20歳の時に亡くし天涯孤独になった時、付き合いだした彼を事故で亡くし絶望した時の話しだった。
残されたお腹の中の赤ちゃんと共に死のうと決意し、死に場所を探してさまよった見知らぬ街の外れで誘い込まれるように立ち寄った教会でサンタクロースの格好をした神父さんと出会ったはなしだった。

5話とも、短いストーリーですが心に強く響く作品です。
クリスマスイブの独特の雰囲気の夜、孤独な女性に訪れる心が暖かくなる不思議な大人の童話です。
思わず涙が溢れてきますよ。

恋愛  ★★★★★
スリル ★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★

THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

すぐそばの彼方 白石一文

松岡龍彦は、政府与党の次期総理の最有力候補松岡龍三の次男、33歳。元は雑誌の政治記者だったが4年前にある出来事がきっかけで自殺未遂を起こし、現在は龍三の事務所で秘書のような仕事をしていた。妻の郁子とは龍三のための政略結婚で、郁子の父は経済界の大物だった。郁子との間には英彦という現在小学生の息子がいるが、事件後、龍彦はいちども自宅には帰らず自分でアパートを借りて生活していた。
龍三の厳しい管理の下、自由に金を使うこともできず、かつ精神的に回復していない龍彦は、時折過去の追想の中にのめりこみ目の前のことがわからなくなったり、友人に借りた金のことを忘れてしまうということが日常的にあり、限定された人生を送っていた。

しかし、恋人の由香子とや友人の岩田に支えられてなんとか生きていた。

4年前、龍彦には薫という心から愛した女性がいた。4年前に起こした事件も薫を愛すればこそという側面もあったが、結果的には事件が元で薫とは別れさせられることになってしまった。

薫への追憶を心に秘めながら、次第に精神を回復し出す龍彦は本来の優秀さを取り戻し、父龍三の政権掌握の力強いブレーンとなっていく。

しかし龍三や龍三の側近に人生を翻弄されながら、自らも政治家になることを決め、過去の清算をすることにした龍彦はそれまで知ることのなかった「事件」の本当のすがたに気づく。

大物政治家の息子の人生を描き、すべてのしがらみを取り去った時、人の人生にとって本当に大事なものは何かということを問っている作品と言えるのではないかと思います。政治の裏側をリアリティ溢れる文章で描く作者の筆力は圧巻です。
とても読み応えのある作品です。

恋愛  ★★★★★
スリル ★★★★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★


THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

アントキノイノチ さだまさし

永島杏平は、父親と二人暮しの21歳。母親は杏平が中学2年の時に家を出てしまっていた。杏平は高校時代に心を病み、中退後自分が通う病院の手伝いなどをして少しずつ改善し、父の学生時代の後輩が経営する遺品整理の会社CO-OPERSに勤めだした。

杏平の心の病の原因は、かつては親友と信じていた”松井”であった。
見栄えが良く頭の回転も速い松井は高校の人気者だった。
が、病的な嘘つきで悪意に満ちた嘘でその場にいない誰かを陥れることに長けていた。

杏平は、同じ山岳部ということもあり、深く松井と関わってしまったが故に、さまざまな出来事を通して松井に対して殺意を抱くようになり精神を破綻させてしまう。

杏平は、亡くなった人の住まいの最後の整理という仕事を通じて、人は平等に生まれて死ぬことに思い当たり、人や命について考える。
また真剣に心を込めてきつい仕事に取り組む佐相さんを初めとした会社の人々や、会社近くの飲み屋のアルバイトゆきちゃんとの触れ合いからたくさんのことを学び少しずつ心の暗闇から回復していく。

この物語は実在する遺品整理会社がNHKの番組で取り上げられたことがきっかけで著者のさだまさしさんが小説作品にされ、2011年に映画化されることも決まっているそうです。

病的な嘘つきが周りの人の心を破綻させるというのは、村上春樹のノルウェイの森でも、そういったシーンがありましたね。人の心は私たちが感じている以上にもろいものなのかもしれません。

このアントキノイノチでは、人の人生のエンディングは様々であることに気づかされます。人と人のつながりが希薄になってしまった現代では
死後の住居の整理を遺品整理の会社に委託されることも実際あることなのでしょう。

例えば老いて一人暮らしで入浴中に不意に病死してしまい、数日経ってようやく発見されるという死に方はむごい死に方かもしれません。
しかし、どれだけ時間とお金をかけて死ぬ準備をしたところで”うまく”死ぬことなんて誰にもできないのではないでしょうか。
であれば、人は死に様など気にせずに常に納得できる生き様を追い求めて日々生きていくべきではないでしょうか。
とそんなことを考えさせてくれる作品でした。

恋愛  ★★★★★
スリル ★★★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★


THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

永遠の0 百田尚樹

太平洋戦争、終戦の年、特攻により戦死した祖父宮部久蔵のことを調べたいと、ライターの姉から調査の依頼を受けた26歳の健太郎は、司法試験への挑戦を断念し行き場のない毎日を過ごしていた。

健太郎の祖母(宮部の未亡人)は健太郎の母を連れ、戦後今の健太郎たちの祖父と再婚していた。

祖父宮部の戦中を知る老人たちを訪ね歩くうち、健太郎は宮部の生き方を通して、戦争の悲惨さ理不尽さ、戦争に散った若者たちの悲しさを知ることになる。
宮部は、盲目的に国を愛し特攻隊員に志願して死んでいった若者ではなかった。老人の一人は宮部を「臆病者」と評していた。
宮部は、「死にたくない。必ず生きて妻とまだ顔を見ていない娘の元に帰る。」と言っていたにも関わらず、終戦の直前に特攻に散ったのだった。
しかし、宮部は人々の記憶に残る優秀なパイロットで素晴らしい人物だった。

ここ数年で読んだ小説の中でもっとも感動した小説でした。
決してよく知っていると言えない戦争や特攻のことがわかるし、学校では教わらない当時の人々の感情がよくわかります。

なぜ戦争が起こったのか、決して戦争を起こしてはならないと心から思いました。
終戦の夏、特に中学生や高校生、大学生、若い人たちに読んでほしい作品です。
感動できる小説、泣ける小説を探している人にはぜひ読んでほしい。

恋愛  ★★★★★
スリル ★★★★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★

THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

骸骨ビルの庭(上)(下) 宮本輝

宮本輝の最新作です。

平成6年2月、47歳の八木沢省三郎は東京の大手家電メーカーの営業マンだったが第2の人生を見つけるべく退職した後、不動産の仲介をするアオヤマ・エンヴァイロメントに就職し、その仕事で大阪の十三の通称「骸骨ビル」にやってきた。

骸骨ビルは昭和16年に建てられ、戦後GHQの接収の後、建主の妾の息子として生まれ認知された唯一の息子である阿部轍正のものとなった。

建主の甥達は、策を弄してビルの所有権を巡り阿部を訴え現在骸骨ビルに住んでいる人間たちの退去を求め、阿部は甥達に流されたでっち上げ話による誹謗中傷の渦中に死んでしまう。
戦後の混乱期に骸骨ビルにやってきた戦争孤児達を阿部とともに育てた阿部の友人茂木泰造は立ち退きの期限となっても退去せず、今やそれぞれに生活を立て骸骨ビルを事務所や住居としているかつての孤児達と骸骨ビルに住み続けていた。

八木沢の任務は、骸骨ビルに寝泊りし、茂木たちを説得し合意の下に骸骨ビルから速やかに退去させることであったが、住人達は八木沢に「ヤギショウ」というあだ名をつけ、自分たちの生い立ち、阿部や茂木の孤児達への無償の愛について語るのだった。

ヤギショウは、積極的な立ち退きの要求は一切せず、かつて阿部、茂木そして孤児達が命をつなぐためにしたように、骸骨ビルの庭に畑を作り出す。

風変わりでありながら、それぞれにやさしい心を持ったかつての戦争孤児達と運命に導かれるように生涯独身のまま、彼らを育てた阿部と茂木の深い深い人間としての情が描かれています。ヤギショウを語り部として、骸骨ビルの住人たちを通して人間の愛情、強さや弱さ、生きることの意味を読者に問いかける作品ではないかと思います。

宮本輝のこの作品に登場するたくさんの人物たちは、親の愛を知らず擬似的な家族の中で育った人たちです。しかしそれ故に愛について苦しみ悩み愛を強く求め、自分に無償の愛情を注いでくれる人間に対して強い愛情をささげたいと願う人たちです。

とにかく、人間、人生の様々なことについて考えさせられる良い作品です。

文章、表現がとても素晴らしいですね。

※単行本です

恋愛  ★★★
スリル ★★★
感動  ★★★★★
総合  ★★★★★

THEME:本の紹介 | GENRE:小説・文学 |

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン リリー・フランキー



ボクは福岡の小倉で生まれ、ほどなくオカンとオトンは別居。ボクはオカンと引越しを繰り返しながら暮らす。オトンは時々登場する。
まじめに勉強せず、将来の夢も持てないまま東京の大学を受験し、東京で一人暮らしを始める。
5年で大学を卒業した後もすぐに職に付かないままやがては文章を書いたりイラストを描いて暮らせるようになる。
そして九州からオカンを呼び、また二人で暮らすようになる。

リリー・フランキーの自伝小説です。お母さんの息子への愛情、そして作者のお母さんへの愛情にあふれる作品です。
決して裕福でもなく、物質的な意味では豊かではなかった母子ですが、自ら幸福を生み出しその幸福にいつも包まれていたんだと思います。
表現のしかたや大きさの差はあれ、親の、特に母親の子供に対する愛情というものは、この作品に描かれているこういうものなのだと思います。

とにかく泣けます。再読なのに不覚にも電車の中で泣いてしまいました。

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